ショートショート小説No.2『振り子を愛する男の話』 1.0.0


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孤独な男たちへの物語

目を開けると、そこは見知らぬ部屋の中。
孤独の中で出会う、裸身の美女。
男はその女性を救おうと試みる。
その驚くべき結末とは?
通勤途中で読める、本格的ショートショート。

●立ち読み
振り子を愛する男の話

    作:桜風 涼
   はるかぜ すずし

 目を閉じていると、突然、不思議な空間に入り込んでしまうことがある。ふいに眠りに落ち、夢に入り込んでしまったのかもしれない。そんな体験はないだろうか?
 その男がその目を開けたとき、あたりは真っ暗で、そこがどこなのかもわからなかった。男の顔の前には、ただ真っ暗な空気があるだけなのである。
 不思議なもので、目が見えなくなると気づかぬ内に体がこわばるらしい。おそらく、自分はその場に直立しているのだろう、そう感じていた。だが、実際にどうなのだろうと確かめようとすればするほど、なぜか体中に力が入ってしまう。
 男はもがくように頭を振った。すると今度は自分が立っているのか寝転んでいるのかもよく分からなくなってしまった。しばらくして気がつくと、両手を目の前に突き出し、何もない空気の中を手探りをしているではないか。そう、指に靄が絡みついてくるような感覚…、空気に濃淡があるように男には思えた。
「おーい」
 男が叫んだ。
 誰も応えない。
 不安が心の中に広がった。
 自分の鼓動がザーザーという土砂降りの後のどぶ川の流れのように響く。
「(落ち着け)」
 男は自分に言い聞かせるようにつぶやこうとした。しかし、声の出し方を忘れてしまったのか、最初の発音がかすれて、
「チツケ」
となった。


ショートショート小説No.2『振り子を愛する男の話』



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